教師の仕事の多忙さを知っているからこそ、育休復帰が不安になると思います。
復帰後の現実と、復帰・退職それぞれのメリット・デメリットを紹介します。
産後に教師の仕事を続けられるのか?
ただでさえ世界一多忙と言われている日本の教師。
更に、そこに育児が加わると、「やるべきことの多さ」に加えて、「自分の子どもを大切に育てたい」という気持ちの両立に悩まされる教師が多いのではないでしょうか。
私も悩んだ内の一人です。
フルタイムで学校に勤めるということは、保護者対応、業者対応、ひっきりなしに鳴る電話応対、校務分掌や会議・研修など、多くの業務をこなさなければいけません。
たとえ定時に帰れたとしても、仕事を持ち帰ったり休日出勤(ボランティア)をしたりして、「一番大切な自分の子どもに、学校の子どもと同じように丁寧に対応できるのか・・・」と葛藤する人が多いと思います。
フルタイム教師が育児をするとどうなる?
私が今まで経験した3つの学校での経験では、育休復帰者は、多い順に次の3パターンに分かれます。
①仕事も育児も割り切って続ける
②子どもに何らかの症状が出てから退職する
③復帰後数年働いてから退職する
それぞれ、1つずつ見てみます。
①割り切って続ける
肝心なのは「割り切って」という部分です。
仕事でも育児でも「できないものはできない」。
自分の時間を全て自分の裁量で使える人と比べて、教室掲示や授業の準備、日記へのコメントなど、できないものはできない。
自分の子どもと毎日一緒に料理をしたり、ゆっくりお風呂に入ったり、寝る前に少し一緒に遊んだり、少し体調が悪ければ早めに休ませたり、できないものはできない。
ですが、そうやって働いている人は教師に限らず大勢いるでしょう。
最低限、自分の子どもが死なない、職場では学級崩壊しないレベルで回していく、それができるだけでも合格点です。「隣のクラスの掲示が豪華」「手作り授業プリントが用意できない」、当たり前です。
学校でも家庭でも、短い時間しか使えないことを自覚して、目の前にいる子どもと接する時に全力で心から接する ことができれば、その他のことは考えないようにしましょう。
今まで行っていた丁寧な取り組みもやめましょう。無理なものは無理。考えるだけ自分のこころがすり減ってもったいないです!
その割り切った気持ちを強く持ち続けていける人が、フルタイムでの教師と育児を両立し続けていける人だと言えるでしょう。
注意してほしいのは、「割り切れる人が立派」なわけではなく、「割り切れない人が弱い」わけではない、ということ。
何を優先するか、価値観の違いだということです。
②子どもに何らかの症状が出てから退職する
悲しいことですが、「自分の子どもの精神状態が不安定で身体症状が出てきた。」「娘が小学校に入るまで何とか頑張ったが不登校になってしまった。」という状態になってから退職する同僚も何人か見てきました。
「育休取らせてもらったのにごめんね。もう自分の子どもを優先させて。」
と言って退職した人もいます。
金銭面の事情からすぐには退職には踏み切れない人。
時短を申請しても、結果として家への持ち帰りがあるため意味がないと感じる人。
ここまで来てしまうまで色々な事情があったと思います。
ただ、限界まで来てしまう人は、責任感が強く、言われたことを断ってはいけない、と思い込んでいる人が多い印象です。
裏を返せば児童への指導もそういった価値観で行っている場合があるのではないでしょうか。
言われたことは全てやらなければならない、なんてことはありません。
無理なものは断る。頼れるものは頼る。
「組織に自分を合わせる」だけではなく、「自分に合う組織(働き方)を探す」姿勢を率先して持ち、「楽しく生きている」姿を子どもたちに見せるぞ!というぐらいの気持ちが必要です。
まずは、組織を変えるのではなく自分が使えるサービスに登録して、自分の周りの環境を整えるところから始めてみてはいかがでしょうか。
多くの自治体の公立共済では、福利厚生の中に「ベビーシッター」や「家事代行」サービスがあるので、ぜひ探してみてください。
私も、実際のお願いは3回だけでしたが制度を利用してベビーシッターをお願いしました。
③復帰後数年働いてから退職する
復帰したての頃は他の多くのママさんと同様、とても緊張したし、不安でいっぱいでした。
ですが、「使える制度は使って、やれるだけやってみよう。」
という気持ちで、最初は無理を通して時短で復帰しました。
ドキドキしなかったわけではありませんが、堂々と、笑顔で、全力で取り組むしかありません。
だってそうしないと自分や家族が倒れるから。
ですが、翌年油断して異動先でフルタイムに戻ってしまいました。
その結果、私は気持ちの面で仕事や育児の割り切りが難しく、上記の①②のような同僚や先輩を多く見てきたため、復帰2年目のクラス担任の途中で「もう無理だ」と、ある意味「割り切り」、その年度の3月に退職して非常勤講師に切り替えました。
もちろん退職前には金銭的なシミュレーションもしましたが、いったん気持ちが「無理」に切り替わってしまうと、体がついてこないのを実感しました。
更に、50代で子育てがひと段落した先輩が、採用試験を受けて合格している姿も数人見ていたので、「どうしてもまた正規職員として働きたければ採用試験を受ければいい」という安心感もありました。
その結果、今は小学校の非常勤講師として悔いのない毎日を送っていますが、やるだけやって頑張った復帰後の2年があるから、今の心の軽さがあるのかなと実感しています。
メリット・デメリットを書き出そう
①~③のどの道を行くのか迷ったら、いきなり退職を考える前に、まずは、正規教師・非常勤講師のメリット・デメリットをそれぞれ書き出してみましょう。
私が思いつくのは次のようなところでしょうか。
正規教師 | 非常勤講師 | |
メリット | ・金銭的に安定 ・福利厚生が多い →家事代行、ベビーシッターなども ・学校運営に関わることができる ・学級担任として児童と深く関われる | ・ゆとりを持って自分の子どもと関われる ・授業の準備に専念できる ・余計な校務分掌がない ・副業(アルバイト)で色々な世界を知れる ・睡眠時間が増えて体調が良くなる ・社会保険に入ることができる ・一般的なバイトより時給が高い |
デメリット | ・自分の子どもと過ごす時間が少ない ・睡眠不足で体が辛い ・福利厚生を使う暇がない ・家事に手が回らず家が荒れる ・ワンオペでは無理がある ・頼れる親戚が近くにいない …etc | ・給料が月によって変動する不安定さがある (・福利厚生が少ない →時間数によっては正規職員と同じになってきています) ・学校運営に関わることができない ・指導児童と関わる時間が少ない |
続けている人、退職した人それぞれに相談してみよう
家族に相談するのはもちろんですが、経験者に実際の話を聞くと自分の決断に自信が持てます。
育休中でも相談できる(連絡を取り合える)職場の人がいれば一番ですが、難しければSNSなどで聞いてみるのもアリかもしれません。
私もどちらの立場の人にも相談してみました。
結論は「自分の気持ちに忠実な結論が自分にとっての正解」であることと、「どの道を選んでも自分の決めた道が正解」だということです。
どちらに行ってももう片方の道は残っているわけなので、「もう片方を選べなかった」という多少の後悔は消えないでしょう。
過去の自分と今の自分は中身も周囲の環境も違うので、自分の人生のステージに合わせて緩急をつけることが必要なのかもしれないですね。